筋の線維化と筋力強化

サルコペニアとは、加齢による筋肉量の減少および筋力の低下のことです。

 

筋肉(筋力)は40歳頃から少しずつ減少し、60-70歳頃から筋力低下の自覚症状を認め75歳を過ぎる頃には深刻な問題となります。

 

また、老化により筋線維数の減少が生じることがわかっています(Essen-Gustavsson ら1986))。

 

予防法として、筋肉の成長を止めている(悪玉)タンパク質ミオスタチン(myostatin )を阻害することが有効です。

 

老人 (68.63±2.86 歳) のサルコペニア対策としてエピカテキン (フラボノイドの一種で、臭いの無い白い粉末でお茶、ベリー、フルーツ、カカオなどに含有)と抵抗運動でミオスタチンがフォリスタチン(タンパク質の一種)に結合して不活性化しミオスタチンの働きを低下させ筋肉の発達を促進することが報告されています(Mafi ら2018:)。

 

しかし、老人を対象とした研究では、伸張位(筋肉をストレッチした状態)での筋収縮では筋腱接合部の損傷が生じやすく危険です(Garrett,1996 )。

 

 

筋肉をストレッチしない中間位での静止性収縮が安全であると報告されています (Ferberら,2002)。 老人や長年の痛みで筋力が低下した時の筋力強化法は注意が必要です。 慎重にしないと、筋トレしても筋力が低下することになります。

 

 

筋肉が収縮した時痛みが生じる(例えば肘を曲げる筋肉)と脳は痛みを軽減するため痛い筋肉が強く収縮するのを抑えて反対側の筋肉(この場合は肘を伸ばす筋肉(拮抗筋))を働かせてブレーキをかけます(防御).

 

拮抗筋の活動性が軽度増加し,防御的適応により患部の筋力(肘を曲げる筋肉)の発生が弱くなり肘を曲げる角度が少なくなり(関節の可動域が狭くなり),肘を曲げる速さが遅くなります.

 

 

筋痛により運動皮質の抑制後(痛い筋肉が強く収縮するのを抑える)に脊髄運動ニューロンの興奮性の減弱が生じ(Le Peraら ,2001),肘を曲げる筋力が低下していきます.

 



運動戦略の変容(肩の痛み)

過負荷の原則◆

筋の最大張力を増大させることには、ある水準以上の張力を発揮し、かつそれを一定期間以上続ける必要があります。

日常生活で筋力強化できる場合は、長い間寝ていたりして動くtことが辛い時です 元のように動けるようになったら、弱っている筋肉に負荷を考慮した筋力強化が必要です。

 

筋肉が全体的に弱っている場合は より強い筋肉による代償運動や関節に負担をかけて動いている時が多いので、専門家の指導がある方が望ましいです。

 

◆特異性の原則◆  

筋力増強訓練は筋の機能に合わせて特異的であるべきという原理です。 トレーニング方法により効果に差異が生じ、目的とあった刺激法を考慮しなければならないという原理です。

 

サイズを大きくする(筋肥大)を目的とするか、瞬発力をつけたいのか、持久力をつけたいのかにより抵抗量や運動速度の方法を変えないといけません。

筋トレはやり方によってその効果は変化します。

 

◆可逆性の原理◆

筋肥大が生じても、トレーニングをやめてしまうと徐々に効果が減じ元に戻るという原理です。

やめると戻ってしまうということは、適切な運動を続けることの大切さを表しています。

 

 

痛みがあってもストレッチや筋力強化をしないと筋力は弱っていくという思い込み

痛みがあってもストレッチや筋力強化をしないと筋力は弱っていくという思い込みは危険です。

 

痛みがあるのにストレッチや筋トレをするとスパズム(筋肉を収縮させると痛みが伴う)が生じやすくなり筋力低下の原因になり痛みが長期化するリスクがあります。

 

 急性炎症(今まで痛くなかったが急に痛くなって炎症症状がある(痛い・赤い・腫れている・熱感などの症状))がおさまるまで2~10日前後の安静が必要です。

 

 

また、痛みがある間は筋力強化しても力が発揮しにくく効率が悪いアプローチであることが分かっています。

 

 

痛みが中枢 (脊髄・脳) に及ぼす影響

力が強くなりたいとか筋肉を太くしたい(肥大)のが目的なら20回以上反復できる重りでは効果がありません。

ただし、循環を良くしたいとか持久力を高めたい目的なら有効です。

筋力や筋肥大には、過負荷の原理に基づいて行います。

 

トレーニング方法にはいろいろな方法がありますが、2つ例として挙げます。

1.最大筋力(1回にあげられる最大の重り)を決定し、最大筋力の10%とか30%を最初6回から10回繰り返し、最大筋力の60%以上の負荷で抵抗運動する方法が比較的安全な方法です。

2.最大筋力で1回運動して、毎週最大筋力をアップしながらトレーニングします。

 

 

 痛みがあるのにストレッチや筋トレをするとスパズム(反射的な筋肉の動きで痛みが伴う)が生じやすくなり筋力低下の原因になります。

 

また痛みが長期化するリスクがあります。

痛みとゆがみの改善ケアとバネのある動的柔軟性の獲得♪

脳科学コンディショニングはコンディショニング直後はリラクゼーション効果が高く、その後の運動能力が高まります

図 ジャンプ力もアップ!

痛くて我慢して動いていると特定の筋肉がスパズム(痛みをともなう筋の収縮)が生じてきます。

そうすると、痛い筋肉を使わないように動いて本来なら使わない筋肉を使って動くように(代償運動脳はプログラムを変えていきます(プログラムの変容)

 

例)

本来なら腕を挙げるときに三角筋を使いますが、

 

代償運動として背中の筋肉(脊柱起立筋、広背筋)が過度に働かして背中を反らしながら腕をあげるようになり、三角筋を使わなくなります。三角筋の痛みが長引くと三角筋は使わないので細くなり(萎縮)

力も発揮しにくくなります。

 

そうすると筋線維は弾力性がなくなり細くなって切れやすくなっていきます。

 

 

脳プログラムの変容

腰の症状が前面に出ているからといって腰だけにアプローチするのでなく肩へのアプローチが必要な場合があります
例えば肩が痛い時には高い所の物を取ろうとして手を伸ばす時、背中が過度に反ってきてしまいます

肩が痛いときにその動きを繰り返す事により手を上げる時に過度に背中を反らすプログラムで動くように脳は運動プログラムを書き換えます(変容)

そのため、今度は二次的に腰が痛くなってくる場合があります
腰が痛くなると今度はつま先立ちで高い所の物を取ることを繰り返すことにより足が痛くなることもあります

痛い部分を使わないようにするため本来なら使わない筋肉や関節の動きで代償する新たなプログラムを脳が作ることを繰り返すことによりたくさんの関節・筋の違和感・不調が生じます


脳の運動プログラムを適切に作り上げるコンディショニングが必要です

 

 

筋力強化には過負荷の原理!

 過負荷の原理と特異性の原理に基づいて科学的な筋力アップを行います。

 

◆過負荷の原理とは

 

筋力値を増大させるためには最大の力の60%以上の負荷をかけ持続しなければアップしません(日常生活(歩く・階段昇降)では筋力アップできません)。

 

◆特異性の原理とは

筋の機能に合わせて特別な方法で行わなければ筋力アップできません。

例)肩が上がらなくなった特に異性の原理に基づいた方法)

. 上がらなくなっていた位置まで肩の動きを拡大します。

 

2.拡大した位置で筋力をアップするため負荷をかけます。

 

 

図 筋力と機能的な関節の協調性ある動きをコンディショニング(脳科学コンディショニング法)して身体の傾きが減少し腰を低くしてサポートする能力が獲得

 

 

歩いて筋力強化になるか?

答えはYesでもありNoの場合もあります。

 

No 元気な時は歩いている時に使う力は最大筋力の20-30%なので筋力強化になりません (筋力強化には過負荷の原理から最大筋力の60%以上必要です)。

 

 Yes  筋力が低下している場合は最初は努力しないと歩けないので使える筋肉は最大限に使っているので筋力強化になります (筋力強化に必要な最大筋力の60%以上の筋力で歩行していると考えられます)。

 

しかし、相対的に弱い筋肉で痛い筋肉は歩く時使わないようにして、より強い痛くない筋肉で代償して歩くことになります。したがって、相対的に弱く痛みを伴う筋肉を使わなくなるので筋力は弱いままか、より弱くなり筋肉が線維化してきて弾力性がなくなります。

 

 

大股で歩くと筋力がつく?

大股であるくとお尻の大きな筋肉(大殿筋)・アキレス腱についている筋肉(下腿三頭筋)・膝を伸ばす筋肉が働きやすくなるのでエネルギー消費は大きくなります。

 

力がつくかという観点では、過負荷の原理で最大筋力(例えば大腿四頭筋の最大筋力)の60%以上の力が発揮されなければ筋肥大は起きないので健常な時は筋肥大に効果を及ぼす可能性は低いと思います。

 

ただし、筋力が低下している場合(骨折後や脳卒中で運動麻痺があるなどの原因で筋力が低下した場合)は最大筋力が小さくなっているので最大筋力の60%以上の負荷で運動している可能性が高いので、大股で歩くことは筋肥大に効果がある可能性が高いといえます。

 

(大股で歩くリスク)

リスクは大股で歩くと踵の衝撃は大きくなるので、変形した関節(変形性膝関節症、変形性股関節症)や腰痛などの痛みが増強する可能性があります。

また、関節の動きの左右差が大きい場合は(運動麻痺や筋力低下などで)、骨盤や脊柱のゆがみが増大し、痛みが誘発・増強する可能性が高くなります。

 

(要は)

痛くないように歩くことが原則になります。痛みが増強するような歩き方をすれば、筋力は低下し痛みが増強します。

 

元気な人は大股で歩いても良いですが、股関節・膝関節・脚関節の筋群の筋力の出力のタイミングが悪いと痛みを誘発する可能性が高くなる場合もあるので、自然と大股で歩ける程度の歩幅で左右差がないことに気を付けて歩くと、いろいろなリスクを回避できます。

 

 

水中での歩行訓練は有効か?

YesでもありNoでもあります。

 

Yes  水中での歩行訓練は股関節や膝関節当が痛い場合は関節の負担を考えれば有効です

 

No  水中での歩行は(持久力はアップしますが)よほど筋力が低下してない限り浮力で歩きやすいですが、負荷が少なく(最大筋力の60%以上の負荷にはならないので)筋力アップにはなりません やせるために水中歩行は意味がありません。

 

温水プールでも身体が冷えるので、数週間、水中歩行を続けると身体が冷えに適応するため脂肪がつきやすくなるリスクがあります。 また、1時間水泳してもジュース一杯飲んだらダイエット効果はないというデータもあるので やせるためには、食事制限が有効と思います。

 

 

当コンディショニングスタジオの骨盤調整法(矯正)

骨盤とは左右1対の腸骨、2つの腸骨の間に挟まれた仙骨、尾骨で構成されます。

仙骨と腸骨の関節を仙腸関節といいますが、骨盤調整とはこの仙骨と腸骨の動きの左右差を調節します。

仙腸関節は動かないと考えている人がいますが、関節という名前なので動かないとなると名前を変える必要があります。

 

幸い、多くの研究で数ミリですが動くことが生体で観察されています。

また、仙骨は数度前後に動きます。

歩行時、仙腸関節はクッションの働きをします。

仙骨の動く角度は寛骨に対して1.5°からで変位は5mm程度です。

このクッションがなくなると歩行時の衝撃が脊柱に直接伝達され腰痛や首痛の原因になります。

このクッション作用を取り戻すのが骨盤調整とか骨盤矯正と呼ばれるものです。 

 

骨盤調整で腰痛を改善ケア

 腰痛改善には骨盤調整でなく筋力強化や脳の運動プログラムをコンディショニング(調節)する必要があります。

 

姿勢は、骨組み(骨と関節)とアライメント(位置関係)を保つ筋肉や靭帯、筋肉や靭帯を調節する脳・脊髄の神経システムで維持され調節されます。

 

骨組みを動かすだけではアライメントを維持できません。

筋肉をほぐしてもアライメントを維持する能力がないので痛みを誘発しやすい姿勢に戻ってしまします。

 

骨盤調整してゆがみをコンディショニングしそのアライメントを維持するには筋力と同時に神経システムを調節する必要があります。

 

例えば靭帯が急激に伸ばされると靭帯-筋反射により靭帯が引き伸ばされるのをコントロールしてくれますが、

筋肉が弱かったり神経システムに問題があると靭帯-筋反射による防御が不十分で筋腱移行部や靭帯の損傷が生じやすくなります。

 

関節の負担を軽減して痛みを誘発しない体を作るコンディショニングのためには、

骨組み(骨と関節)とアライメント(位置関係)を保つ筋肉や靭帯、筋肉や靭帯を調節する脳・脊髄の神経システムの3つをコンディショニングする必要があります。

 

お産後の骨盤調整は慎重に!

お産後の仙腸関節の動きは大きくなる傾向があります。

腰痛で骨盤調整する場合は強い力で調整すると徐々に関節が緩くなり調整しにくくなります。

小さな力(数グラムから数百グラム)で調整し腰痛改善する必要があります。

 

1. Walheim (1984)の研究

(測定方法) 恥骨または恥骨結合にピンを付着させ、電磁測定技術を用いて測定。(変位0.1mmと回旋0.1°の精度)

交互に片足立ちをさせたとき垂直軸に 2-3mm、回旋の恥骨結合の動きを観察した結果、

多産経験の婦人の方が未経験の婦人より動きが大きいことが分かりました。

 

関節は硬いのを柔らかくするのは簡単ですが、緩い関節(亜脱臼ぎみ)を元に戻すには筋力強化が必要で時間がかかります。

 

産後の調整は軽微な力で行うのが肝心!

 

 

骨盤(寛骨)の老化

人体の腸骨の標本で軟骨とその下にある骨の両方に隆起や陥没が見られますが老化により関節面の隆起や陥没が増大します。

 

30代までに腸骨の線維軟骨の表層面は原線維からなり凹部形成と浸食が始まります。

40-50歳台では男女とも関節面の不規則さと粗雑さが増大しほとんどの標本で軟骨とその下にある骨の両方に隆起や陥没が見られるようになります。

 

腰痛の骨盤調整は老化を考慮し慎重にソフトにしなければいけません。

 

アメリカのアメリカ航空宇宙局(NASA)の健常者を対象とした実験では,骨・筋量は4-6週の安静臥位で実験前の 6 から40% の廃用性の萎縮が生じると報告しています。

 

また、筋力の低下よりも筋育の線維化によるコワバリの低下の方が深刻な問題となると報告しています(de Boer et al., 2007)。

 

筋力の低下の次に来るのは弾力性の低下でシコリなどを伴うコワバは適切な抵抗運動を伴うコンディショニングが必要です

 

 

筋肉の弾力性の低下

筋肉減少症(sarcopenia)サルコペニア

サルコペニアとは、加齢による筋肉量の減少および筋力の低下のことです。
高齢者にとってはごく一般的な疾患で40歳前後から発症し75歳を過ぎる頃には深刻となります。


1)筋線維数の減少が生じるこtがわかっています(Essen-Gustavsson ら1986))
2)老人を対象とした研究で伸張位での筋収縮は筋腱接合部の損傷が生じやすいことが分かっています。(Ferberら、2002)。ストレッチは優しくすることが大事です!


 筋肉の成長を止めている(悪玉)タンパク質ミオスタチン(myostatin )を阻害することが予防法として有効です。

老人 (68.63±2.86 歳) のサルコペニア対策としてエピカテキン Epicatechin (フラボノイドの一種で、臭いの無い白い粉末でお茶、ベリー、フルーツ、カカオなどに含有)と抵抗運動でミオスタチンがフォリスタチン(タンパク質の一種)に結合して不活性化しミオスタチンの働きを低下させ筋肉の発達を促進することが報告されています。

Mafi F, Biglari S, Afousi AG, Gaeini AA、Epicatechin Supplementation and Resistance Training-Induced Improvement of Muscle Strength and Circulatory Levels of Plasma Follistatin and Myostatin in Sarcopenic Older Adults. J Aging Phys Act. 2018:1-27.