static stretch(静的ストレッチ)

static stretch(静的ストレッチ)は、リラクゼーションには有効ですが

力(strength)やパフォーマンス( performance)にとっては  
有害(detrimental )な影響を与えます(筋力が低下したり運動能力が落ちます)。

 

静的ストレッチは寝る前とかクールダウンに最適です。

もし、あなたが動的な柔軟性(dynamic flexibility)を改善したいなら
静的ストレッチをして伸ばす(lengthen)かわりに動的ストレッチをお勧めします。

 

 

 

静的ストレッチと動的ストレッチ

 

静的ストレッチ】
筋の長さが変化しないが引き伸ばすようにストレッチ

【動的ストレッチ】
他動的に遠心性収縮(eccentric contraction)の状態を作る
     ( 筋が延長しながらの収縮)

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1. 運動前は静的ストレッチはしない!
理由1) 筋力が低下しパフォーマンスが落ちる
理由2) ケガをしやすい(アキレス腱断裂や靭帯損傷)

2. 運動前は動的ストレッチ
例)スクワット、走る

3. 運動後は優しい静的ストレッチ(筋肉を過度に伸張位
にしない)でリラクセーション

 

 

静的ストレッチか動的ストレッチか

静的ストレッチから動的ストレッチ(静的柔軟性から動的柔軟性(eccentric stretch))

静的な柔らかさは傷害予防になりません。
(参考)
1) 求心性収縮(concentric contraction)
        筋が短縮しながらの収縮
  2) 遠心性収縮(eccentric contraction)
        筋が延長しながらの収縮
  3) 静止性収縮(static contraction)
        筋の長さが変化しない収縮

 

 

動的ストレッチとウォーミングアップの違い

 【運動前の動的ストレッチ】
ゆっくりした動き (遠心性収縮)で関節の可動域を広げて柔軟性を高めるストレッチです。
(結果的にはが動的ストレッチが身体を温めウォーミングアップとなります)

例)ゆっくりしたスクワットで股関節の可動域を広げる

(慢性痛がある場合は静的ストレッチの後に動的ストレッチするが痛みの増強のリスクある)

【運動前のウォーミングアップ】

比較的速い動きで(求心性収縮)、体温・筋温を高め、筋への酸素・血流量を増加することを目的とします。

例)スピードが速いスクワット

 

なぜ静的柔軟性だけではいけないのでしょうか?

静的柔軟性は筋肉を引き伸ばすことにより骨のアライメントが変化します。

膝関節を伸ばしすぎると大腿骨の後ろの筋肉(膝の裏の筋肉(ハムストリングス))が伸ばされすぎて、膝関節が緩くなって脛骨が後ろに行き過ぎて膝関節が反張する変形の危険性があります。

それを防ぐためには、ハムストリングスと腓腹筋の筋力が必要です。

骨の静的柔軟性を変えるのでなく、筋力と機能的な関節群の協調性ある動きと柔軟な筋肉の反応(靭帯-筋反射)を変えながら動的なアライメントをコンディショニングする必要があります。

 

 

痛みがあってもストレッチや筋トレは大丈夫?

答えはNoです!


痛みがあるのにストレッチや筋トレをするとスパズム(筋肉を収縮させると痛みが伴う)が生じやすくなり筋力低下の原因になり痛みが長期化するリスクがあります。
急性炎症がおさまるまで10日前後の安静が必要です。

施術も痛みを伴わない刺激が重要です。
歪みを調整し体のアライメント(骨の位置関係)の調整が重要です。
特に骨盤や首の骨の歪みを調整し
歪みの原因の補正が重要です。ブログ画像

ストレッチしても筋肉は伸びやすくなりません

ストレッチすると筋肉が伸びて身体が柔らかくなると勘違いしている人が多いですが
ストレッチしても筋肉の長さは増大されて伸びやすくなりません
持続的に筋肉を伸ばした後に筋肉が柔らかくなったと感じるのは
’感覚’の変化に由来する(感覚理論(sensory theory))として説明されています。

脳がストレッチの刺激になれて、より強い力でストレッチして筋肉を伸ばしていても
自分では同じ力で伸ばしていると勘違いしてしまってストレッチ効果と感じてしまいます(’感覚’の変化に由来する(感覚理論(sensory theory))

実際は自分のストレッチする力が大きくなっているので筋肉を傷めやすくなります。
注意しないといけないのは、腰痛があるのに過度なストレッチを行うと椎間板や脊柱周囲の筋線維を傷つけてしまうことです。
弱い筋肉はストレッチすると筋線維の弾力性が低下しているので断裂しやすくなっています。
過度なストレッチは危険です。
しかも、’感覚’が変化し過度なストレッチをしていると感じなくなってしまうことが危険なのです。

(動物実験では,筋長の増大により他動的な筋長-張力曲線の右方へのシフト時に生じる(同じ力で伸張するとストレッチ後は筋長は変化し伸張性の増大がある)
ヒトとでは他動的トルク値-角度曲線の右方へのシフトが認められない((同じ力で伸張するとストレッチ後も筋長は変化なし。伸張性の増大はない。ヒトの筋の伸張性の増大は単なる’感覚’の変化に由来する(感覚理論(sensory theory)))
(感覚理論(sensory theory), Wepplerら. 2010)

 

膝蓋大腿痛患者に対するストレッチ運動の効果

膝蓋大腿痛症候群は、筋肉の硬さと密接に関連しています。ただし、柔軟性のないハムストリングを持つ 膝蓋大腿痛患者に対するストレッチ運動の効果に関する研究はほとんどありません。この研究の目的は、柔軟性のないハムストリングを持つ 膝蓋大腿痛患者を対象にハムストリングの静的ストレッチと動的ストレッチの効果を比較することでした。

 

仮説: 静的ストレッチと比較して、動的ストレッチは、ハムストリングの柔軟性、膝の筋力、筋肉活性化時間を改善します。

 

研究デザイン:前向き無作為対照試験

エビデンスのレベル: レベル 2

 

方法:合計46名(静的ストレッチ25名、動的ストレッチ21名)が参加した。

ハムストリングの柔軟性は、膝を自分でできるだけ伸ばした状態の膝窩角を指標にしました

ハムストリングスと大腿四頭筋の筋力と筋活動時間は、等速性運動器を使用して180deg/secで測定されました。

臨床的指標は、痛みの主観的スケールを使用して評価されました。

 

結果: ハムストリングの柔軟性と影響を受けた膝の膝の筋力にグループ間で有意な違いはありませんでした。

動的ストレッチング群では、静的ストレッチング群と比較して、筋肉活性化時間と膝の臨床的指標が有意に改善されました。

 

結論: ハムストリングスが柔軟性に欠ける 膝蓋大腿痛 患者では、強化運動を伴うハムストリングスの動的ストレッチは、強化運動を伴うハムストリングスの静的ストレッチグと比較して、筋肉の活性化時間と臨床的指標の改善に優れていました。

 

 

臨床的意義:柔軟性のないハムストリングを持つ膝蓋大腿痛患者の機能を改善し、痛みを軽減するためにハムストリングスの動的トレッチングが有効です。

 

 

 

持続ストレッチを出勤や運動前にしてはいけない理由

 1)静的な持続ストレッチがなぜ1990年代まで主流だったのかというと、急激なストレッチ(バリスティックストレッチ(筋の急激なストレッチをリズミカルに繰り返す))が筋や関節の傷害の原因になるからでした。

45年前の私が学生の頃は、急激なストレッチはやってはいけないストレッチ法(バリスティックストレッチ)でした。現在もそう考えている人が多いかと思います。

 

2)静的な持続ストレッチ(アキレス腱を伸ばす時によく用いられた持続的に筋を伸長した状態を保つ方法)は筋力が低下するので運動前には使われなくなっています。

 

1970年ごろはアキレス腱をよく伸ばして運動したのにアキレス腱が断裂するのはおかしいと患者さんが訴えていました。

その当時は患者さんに説明することはできませんでした。

今の科学的根拠ではその原因が分かります。

原因はストレッチをしすぎるとアキレス腱と腓腹筋の接合部が傷ついたりストレッチし過ぎの筋力低下が挙げられます。 

1990年代の研究で持続ストレッチは筋力が低下することが多くの研究で追認されていますが実は1980年代から生理学的研究で力が低下する根拠が示されていました(脳への抑制作用が強いので力を発揮しにくくなります)。

 

壁を押しながらアキレス腱を持続ストレッチすると筋力が低下してくるので出勤や運動前にしてはいけない理由です

 (ただし、寝る前の静的ストレッチはリラクゼーションが得られるので有効です)

 

 3)現在は静的な持続ストレッチやバリスティックストレッチではなく、運動前は動的ストレッチ(ダイナミックストレッチ筋肉をゆっくり引き伸ばしながら力を入れる (遠心性収縮) ))が主流です。

 

ダイナミックストレッチ (筋肉をゆっくり引き伸ばしながら力を入れる (遠心性収縮) ) の代表はラジオ体操です。

 

ラジオ体操を正確に行うとかなりハードな運動ですが速いリズミカルなバリスティックストレッチよりも安全な方法です

 

 

 

寝る前やリラックスのためなら持続伸張はOKです

持続伸張は運動前は筋力が低下するので力が発揮されにくくなるのでNGですが、

寝る前とかリラックスしたいときは脊髄レベルで抑制作用が確認されているのでOKです(1980年代の多くの生理学的研究で明らかになっています)。

 

 

 

 

伸張力に応じて筋長は変化するがストレッチしても伸張性の増大はない

ストレッチしても筋肉は伸びやすくなりません

動物実験では,

筋長の増大により

 他動的な筋長-張力曲線の右方へのシフト時に生じる(同じ力で伸張すると

ストレッチ後は筋長は変化し伸張性の増大があります。

 

ヒトでは

 他動的トルク値-角度曲線の右方へのシフトが認められないが感覚が変化して柔らかくなったと感じます(感覚理論(sensory theory))。

 

 

ヒトの筋の伸張性の増大は単なる’感覚’の変化に由来すると云われています(強い力で伸張しても強い力で伸張されたと感じなくなります(感覚の変化))。

 

 

 

なぜ静的柔軟性だけではだめなのか?

静的柔軟性は筋肉を引き伸ばすことにより骨のアライメントが変化します。

 

膝関節を伸ばしすぎると大腿骨の後ろの筋肉(膝の裏の筋肉(ハムストリングス))が伸ばされすぎ膝の制御が反射的にできなくなったり、靭帯が緩くなることにより膝関節が緩くなり脛骨が前後左右に行き過ぎて膝関節が反りやすくなったり(反張する)して変形の危険性が上がります。

 

それを防ぐためには、ハムストリングスと腓腹筋の筋力が必要です。

 

骨の静的柔軟性を変えるのでなく、筋力と機能的な関節群の協調性ある動きと柔軟な筋肉の反応(靭帯-筋反射)を変えながら動的なアライメントをコンディショニングする必要があります。

 

 

 

動的柔軟性が高い時はケガは起こりにくいといえます

柔らかさのは静的柔軟性と動的(機能的)柔軟性に分けることができます。

 

静的柔軟性は開脚のできる股関節の角度の増大とか立って手が床に余裕でつくというような膝を伸ばしたままで股関節がどの程度に曲げるかが、大腿骨の後ろの筋肉(膝の裏の筋肉(ハムストリングス))の柔らかさのテストとしてよく使います。

 

動的柔軟性は柔道の受け身の時の円滑な防御反応とか空手の上段回し蹴りのようなバネのある柔軟な動きです。受け身も回し蹴りもパワーが必要で筋肉の柔軟な反応と筋力を必要とします。

 

上段回し蹴りが単純なので例として取り上げますが

上段回し蹴りには開脚できるとか立って手が床に余裕でつくとかが必要条件でしょうか?

答えはNo!です。

上段回し蹴りの時は膝が軽く曲がっているので膝が伸びている静的柔軟性は必要ありません。

また、膝をきれいに伸ばして蹴ると蹴った方の関節のダメージがくるので

実践的には膝を経度曲げて蹴る必要があります。

(柔道も膝を伸ばし切って受け身をすると次の攻撃が遅れるので膝はすこし曲げています)

 

静的柔軟性と動的(機能的)柔軟性の最大の相違は筋力と機能的な関節群の協調性ある動きと柔軟な筋肉の反応が必要かどうかです。

 

動的(機能的)柔軟性は筋力が強く反応時間が短いことが指標となります。

 

静的な関節と筋肉の柔軟性でなく、動的柔軟性は、脳を含む神経系に対応できる機能的な筋群の柔軟性が必要といえます。 

 

 

 

 

ストレッチと筋力低下

ストレッチの危険性

高齢者の筋肉や弱った筋肉を直接ストレッチすると筋線維の田烈が起きて出血傾向になり痛みが増強します

高齢者を対象とした研究では筋を伸ばした伸張位で力を入れると筋と腱のつなぎ目が傷つきやすくなることが分かっています
筋を少しストレッチした状態(筋が完全に伸ばされていない中間域)で筋トレする方が安全と報告されているのでストレッチ筋膜法は弱った筋肉や痛い筋肉に直接ストレッチしません

安全にストレッチ効果を得るため目的の部位と遠隔の健常な部位の抵抗運動を行います
ストレッチ筋膜法は抵抗運動により筋膜を介して間接的に目的の筋肉を少しストレッチした状態(中間域)で筋トレする方法です
ストレッチ筋膜法はリラクゼーション効果とその後の脳の活性化を生じさせます

 
腱板損傷患者の運動能力の回復 
 ■ Arai M, Shiratani T : The remote after-effects of a resistive static contraction of the pelvic depressors on the improvement of active hand-behind-back range of motion in patients with symptomatic rotator cuff tears, Biomedical Research 23(3) : 415-419, 2012.   
                          
変形性膝関節症 の運動能力の回復
■ Masumoto K, Arai M, Shiratani K, Akagi S, Shimizu A, Tsuboi A, Yanagisawa K, Shimizu ME : Effect of hold relax involved passive stretching of the target muscle and sustained contraction facilitation technique in the middle range of motion of PNF on the active range motion of the knee joint in orthopedic patients. PNF Res 13(1). p1-7. 2013.
■ Shiratani K, Arai M, Masumoto K, Akagi S, Shimizu A, Tsuboi A, Yanagisawa K, Shimizu ME : Effects of a resistive static contraction of the pelvic depressors technique on the passive range of motion of the knee joints in patients with lower-extremity orthopedic problems. PNF Res 13(1). p8-17, 2013.

 

 

腰痛があるときのストレッチは危険!

持続的なストレッチ (静的ストレッチ) を繰り返すとリラクゼーション効果がありますが、筋力は低下し神経系の反応が遅くなり安定性のます。

 

Herda(2008)の研究では、成人男性15名に対し,足底屈筋への他動伸張と長期の振動での即時効果を比較した結果,ピークトルク値(力)は他動伸張(持続ストレッチ)と振動(機械的な振動刺激(バイブレーション))後に10%,5%減少し,筋電図振幅値は9-23%減少しました.

 

また、Cerqueira(2020)は30秒間を4回足首の筋群をストレッチすると足首の安定性のための運動神経の反応が遅くなり足部が不安定になることを筋電図の実験で報告しています。

 

過度な静的ストレッチは筋力を低下し、神経筋反応の減弱によりパフォーマンスが低下します。 特に運動前の静的ストレッチは注意!

 

体の硬さ

体の硬い原因は以下の原因が考えられます。

1.関節の歪み 2.筋肉の硬さ 3.痛み 4.慢性的な痛みがあり動くことに不安がある

体が硬いと筋肉をストレッチするのが一般的ですが原因が以下の場合は逆効果です。
1.関節の歪み
3.痛み
4.慢性的な痛みがあり動くことに不安がある

 

痛みがある場合はストレッチや筋トレは禁忌!

ストレッチで痛みを起こすとストレッチされすぎないように無意識に体を硬くし防御的な反応がおきます。

高齢者を対象とした研究では筋を伸ばした伸張位で力を入れると筋と腱のつなぎ目が傷つきやすくなることが分かっています。

 

腰痛が長引くと、筋肉が痛みのため力を発揮するのを脳が無意識に抑制するので

背中の筋肉の力が弱くなって筋肉が萎縮しやすくなります。

 

筋力が低下していると筋肉を固めててもストレッチの力に負けて筋線維が過度に引き伸ばされすぎて筋線維がダメージを受けます。

 

腰痛の時のストレッチは慎重に行うのが肝心です。

 

 

 

萎縮筋のストレッチは危険!

ストレッチで痛みを起こすとストレッチされすぎないように無意識に体を硬くし防御的な反応がおきます。

しかし筋力が低下していると筋肉を固めててもストレッチの力に負けて筋線維が過度に引き伸ばされすぎて筋線維がダメージを受けます。

 

健常時と比較し筋の直列弾性要素が変化します。

腱と腱鞘は固定後の萎縮によりこわばり(stiffness)が低下し変形されやすくなっています (de Boer et al., 2007) 

弱っている筋肉のストレッチは慎重にしてください

 

高齢者のストレッチは注意が必要

老人を対象とした研究では筋肉をストレッチした状態で力をいれると

筋腱接合部(腱と筋肉の接合部位)が傷つきやすく損傷のリスクが高い(Ferberら、2002)

 

Garrett1996)の実験)

ウサギのの後肢の前脛骨筋を伸張位にした状態で

電気的に静止性収縮を起こさせた状態でのストレッチした時とリラックスした状態でのストレッチ時の構造破壊に必要な力は15%しか違わなかったが(筋肉を伸ばした状態で、筋肉が収縮した時(力が入っている時)の方が伸張位でリラックスした時と比較して、筋線維を断裂するためのストレッチ力が15%余分に必要だった),中間域(筋肉をストレッチしないで緩んだ状態)で静止性収縮させた状態(筋肉が緩んだ状態の長さで力を入れている時の方が)、中間域でリラックスした状態で筋線維を断裂するストレッチ力は2倍必要だった(中間域で静止性収縮した時の方が筋線維を断裂するのに力が2倍必要だった)。

 

このデータは中間域での筋収縮の安全性を示唆している

 

伸張位(筋肉をストレッチした状態)で力を入れると、筋線維が断裂しやすい。老人は損傷リスクが高いのでストレッチした状態で力を入れた状態を長く維持(持続ストレッチ)するのは要注意!